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  • 執筆者の写真Joe

「シニアの活用」は思っているほど甘くない

更新日:2020年5月5日



シニアの活用とは、企業が人手不足を補うためにシニアを雇用し、働いてもらうという部分に焦点が当たっていますが、それ以上にシニア以外の社員のケアを行い、同時に使えないシニアを追い出し、生産性を上げるという本質的なことを忘れてはいけません。


シニア側も人手不足なのでどこかの企業に使ってもらえると思い込んでいてはダメで、若い頃よりも更に努力をし、学び続けないとどこも使ってくれません。



求人倍率は過去最高、労働力の不足によって活用が期待されるシニア


総務省が2019年に発表した人口推計によると、日本の65歳以上の高齢者人口は前年比32万人増の3588万人で、過去最多を更新し、総人口の28.4%を占めました。後期高齢者医療制度の対象となる75歳以上は53万人増え、1848万人となり、総人口の14.7%とおよそ7人に1人となりました。


我々は既に高齢化社会で生きているということを意識しなければいけません。


一方で、厚生労働省は、日本の生産年齢人口は2017年の6,530万人に対し、2025年の時点で6,082万人、さらに、2040年にはわずか5,245万人にまで減少すると予測しています。


生産年齢人口の縮小の大きな原因となっているのは、日本の出生率低下と、人口の高齢化です。2018年は、出生数92万1,000人に対し、死亡数が137万人であり、日本の人口は 44万8,000人減少したことになり、年間の人口の自然減としては過去最大の減少幅を記録しています。


これによって起こるのが企業における人手不足です。人手不足の状況を示す有効求人倍率は2017には1.5倍、2018年には1.61倍と、バブル期のピークであった1.46倍をも上回っています。



【全国】有効求人倍率の推移

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より。グラフはマイナビウェブサイトより抜粋


完全失業率もリーマンショック後の2009年には5.1%だったのが、その後下がり続け、2017年には2.8%、2018年には2.4%となっています。



完全失業率(年別平均)の推移

出典:総務省統計局「労働力調査 長期時系列データ」より。グラフはマイナビウェブサイトより抜粋


このような労働力の需給ギャップは今後も拡大し続け、2025年に不足する労働力は583万人とも言われています。(パーソル総合研究所より)


人手不足を解消するための労働力確保として主に期待されているのが、働き方改革や自動化による生産性の向上、移民の受け入れ、女性の活用、そしてシニアの活用です。


特に、最近は老後2000万円問題や政府による定年の引き上げなどの要因によって、企業側がシニアの活用を検討するだけではなく、シニアの労働者側の働く意欲も高まっていると言えます。



シニアの企業が求めるもののギャップ


下記は、エン・ジャパンが行った人材不足の状況についてのアンケート調査です。



不足している職種

出所:エン・ジャパン 2019年「企業の人材不足」実態調査―『人事のミカタ』アンケート―


これを見ると、営業職、IT、WEBなどの技術職、企画職といった職種が企業内で不足しているとのことです。


しかしながら、このような業界を含むほぼ全ての業界においてシニアの活用をする際、シニアと雇用側両方に大きな懸念があります。



雇用する側ではシニアを活用する上で、下記のような懸念が挙げられます。


Ÿ コミュニケーションがとりずらい

Ÿ 生産性が低い

Ÿ 若手社員の流出、企業文化への影響

Ÿ 仕事をしない

Ÿ 新しい業務知識を学ばない

Ÿ 新しいテクノロジーを覚えられない

Ÿ 経験を積んでいる分若手よりも高い給与を払う必要がある

Ÿ 肉体労働は体力的にきつい、深刻な事故などにつながる恐れがある



仕事をしていないのに若手よりも高額な給料をもらっているので、若手のモチベーションが下がって、若い優秀なタレントが社外に出て行ってしまうといったことは企業にとって深刻な問題です。


一方、雇用される側のシニアも下記のような懸念を抱いています。


Ÿ 若年社員の指示を受けるのが嫌

Ÿ 賃金に対して不満がある

Ÿ 新しいテクノロジーを覚えられない

Ÿ 従来のやり方に拘りがある / やり方を変えたくない

Ÿ やりがいのない仕事はやりたくない

Ÿ 長時間の肉体労働は体力的にきつい



シニアがまだまだ現役で働きたくてもコミュニケーションや働き方で苦労したり、新しいテクノロジー、ツールの習得に時間を要したりするといった懸念があります。


かといって、シニアを受け入れる為、シニアが使いやすいツールを導入するなど、むやみにシニアに合わせた「シニアセントリック」な労働環境にしてしまうと生産性が下がる恐れがあります。


Slackなどのチャットツールやその他簡単な労働効率化ツールすら使いこなせない人がいて、そのような効率化の為のツールの導入をためらっている企業も多いです。


労働環境を物理的にバリアフリーにしていくというのは良いと思いますが、業務効率化ツールや社内のルールなどをシニアに合わせ作り直すのは逆に非効率を生むでしょう。


下記は、年齢別の企業の採用意向です。

出所:ビジネス+IT「その厳しさに中高年が絶望、「シニア転職」に失敗する人の特徴とは?」


これを見ると、積極的に採用したいというのは35歳未満の人であり、55歳以上では積極的に採用を強化するというのは1%しかいません。


企業はシニアではなく、若い人を積極的に雇いたいのです。ですが、若い人がいないので仕方なくシニアを雇用する事も考えなければいけないというのが現状です。


また、特に事務や軽作業などの単純労働ではシニアを雇うよりも、本質的にはオートメーションやセキュリティ技術向上で対応したいと考えている企業が多いでしょう。



シニアが活躍できる場はどこにあるのか


シニアの活用機会が高まっているとはいえ、働き盛りのときに何もしてこなかったシニアは必要ありません。


何もしてこなかった人は雇いたくない/今の会社から出て行ってもらいたい。逆に価値のある人には年齢関係なく雇いたい/留まってもらいたいというのが企業の本音です。


シニアの経験が活かせるのは大きく3つです。


1. これまでに築いたネットワークを生かして仕事を取ってくる、社内外のカタリストになる

2. 高度な専門性、スキルを活かして仕事を続けてもらい、同時に若手の育成、スキルの伝承をやってもらう

3. 人手が不足している単純作業など


ただし、いずれの場合も若手のモチベーションを下げないために本流と外れたポジションで採用するかコントラクターとして契約するといったことがポイントです。


企業側からすれば、1と2は年齢関係なく新しく雇いたい、或いは定年を超えてからもリテンションしたい、3は猫の手も借りたいといった感じです。


3に関しては、いずれオートメーションされ、AI、ロボットに代替されますので、シニアとしては1か2を目指さなければなりません。


企業にとってシニアの活用とは、ただ単にシニアを雇い入れて働いてもらうだけではなく、使えないシニアを排除することもセットでやって生産性を上げるのが本質です。もちろん、シニア以外の従業員のモチベーション維持を同時にやる必要があります。


日本の法律上、従業員の解雇は難しいということで、そこで思考停止し、何もしないという選択に行きつくケースが多いように感じます。


確かに、例えばアメリカでは解雇する条件が労働契約書に明確に定められていなければ、雇用主はどのような理由でも通告なしに解雇できます。そのような国に比べれば厳しいですが、例えば、仕事に対して明確に業務範囲とKPIを設定し、能力を可視化して客観的な判断材料をつくり、パフォーマンスが出なければ解雇する、或いは、1年ごとなどに更新されるコントラクター契約でシニアを雇用するといったことはできます。



これまでの経験がないと老後に苦労するのは仕事だけではない


活躍できない人は趣味にでも打ち込んでくださいと言いたいところですが、そうもいかないようです。


引退するまでこれといった趣味を持たずに過ごしてきた人は、老後を楽しく過ごそうと老後に新しい趣味を見つけようとカルチャースクールや何かの教室などに通ったり何かのコミュニティに顔を出したりする人がいます。しかしながら、経験がないと周囲に置いて行かれ、カルチャースクールやコミュニティカーストの中で底辺となります。結果として、趣味のコミュニティの中でも浮いてしまって馴染めず、すぐに辞めてしまいます。


なので、老後引退してから趣味を見つけるのでは遅く、趣味も現役時代にやっておかなければいけないのです。



まとめ


シニアは…

・若い頃に活躍できない人は、年を取ってから必要とされるはずはない

・企業に必要とされるスキルやネットワークを獲得する

・若手をのキャリアの妨げにならないようにし、若手を育てる、キャリアをサポートする

企業は…

・シニアを雇用する際は、他の社員のポジションを奪わないように契約社員、コンサルタントなどとして働いてもらい、他の社員のモチベーション維持を同時に行う

・働き方をシニアセントリックにしすぎない

・特別な能力、専門性、人脈がないシニアは雇う / 使うのを辞めることを宣言することで、シニアに危機感をもって必死に働いてもらう





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