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  • 執筆者の写真Joe

「日本の島国根性が国内大学をダメにしている」は本当か?

更新日:2020年5月2日

近年、世界大学ランキングで年々国内の大学のランキングが下がっているのが問題視されており、日本の大学は留学生の受け入れが少ないから、あるいは外国人教員が少ないから世界大学ランキングが低くなっているという主張がある。


少しググってみると、以下のようなことを原因であると言っている記事が散見される。

「英語で研究できる環境にない」

「外国人留学生や外国人研究者の数が少ない」

など


それは本当なのだろうか。

まずは世界の大学含め、現状を確認してみよう。



下記は、TIMES HIGHER EDUCATIONが毎年出している「World University Rankings」のデータで、2011年のトップ10の大学の現在までのランキング推移である。



近年ではカリフォルニア工科大学とオックスフォード大学が一位争いをしているというような状況。


ハーバード、スタンフォード、MIT、プリンストン、ケンブリッジなどは上位常連となっているが、UCバークレーが近年ランクを著しく下げている。

イエール大学も最近ではトップ10から外れている。


続いて、アジアの大学を見てみよう。

以下はアジアの主な大学のランキング推移である。


これを見るとアジアの大学は2011年度から2018年度の間で軒並みランクが向上している。


中国

北京大学(Peking University): 37位 → 27位

清華大学(Tsinghua University): 58位 → 30位


韓国

ソウル大学(Seoul National University): 109位 → 74位


シンガポール

シンガポール国立大学(National University of Singapore): 34位 → 22位

南洋理工大学(Nanyang Technological University, Singapore): 174位 → 52位



ただし、香港と日本はランクを下げている。


香港

香港大学(University of Hong Kong): 21位 → 40位

香港科技大学(Hong Kong University of Science and Technology): 41位 → 44位


日本

東京大学: 26位 → 46位

京都大学: 57位 → 74位



下記は日本の大学のランキング推移である。



東大、京大以外の大学も軒並み下降傾向である。

東工大、大阪大学、東北大学は2016年から200位以内にすら入らなくなってしまった。





Times Higher Educationのランキングの基準は以下のようになっている。

https://www.timeshighereducation.com/world-university-rankings/methodology-world-university-rankings-2018



Teaching (the learning environment)(教育): 30%

· Reputation survey: 15%

· Staff-to-student ratio: 4.5%

· Doctorate-to-bachelor’s ratio: 2.25%

· Doctorates-awarded- to-academic-staff ratio: 6%

· Institutional income: 2.25%


Research (volume, income and reputation)(研究): 30%

· Reputation survey: 18%

· Research income: 6%

· Research productivity: 6%


Citations (research influence)(引用): 30%


International outlook (staff, students, research)(国際性): 7.5%

· International-to-domestic-student ratio: 2.5%

· International-to-domestic-staff ratio: 2.5%

· International collaboration: 2.5%


Industry income (knowledge transfer)(民間からの研究資金): 2.5%




これらの評価基準をみると、留学生比率は「International outlook (staff, students, research)(国際性): 7.5%」の項目の中の「International-to-domestic-student ratio: 2.5%」にあたるが、わずか2.5%に比重しかない。 外国人スタッフ比率「International-to-domestic-staff ratio: 2.5%」に関しても2.5%の比重しかない。

「国際性」の比重全体でみても7.5%である。



確かに、日本の大学は国際性を測る基準である「International Outlook」の点数が非常に低い。

この項目の2018年のトップ30校の平均点は73.9点であるのに対し、例えば東京大学の点数は32.2点である。


では、この「International Outlook」が原因で東京大学のランキングが低くなってきているのだろうか。


必ずしもそうとうは言えない。


2011年度、東京大学が26位だったころの「International Outlook」は18.4。

東京大学が46位である2018年度の「International Outlook」は32.2。変化率75%

(トップ30校の平均: 2011年:62.7 → 2018年:73.9。 変化率18%)


東京大学のランキングが下がっている原因が国際性であるなら