コンサルティングファームの面接では、フェルミ推定やケース面接を行い、候補者を選定するのが一般的です。
以前は、これらの面接方法はいわゆる「地頭のよさ」を図るためのものだと言われていましたが、昨今ではフェルミ推定やケース面接の対策本などが出回っており、またコンサルティングファームの入社面接の対策を行うサービスやサークルなどが乱立している状況ですので、現在では面接対策はいくらでもできるようになっていますので、当初言われていたような地頭の良さを図るというよりも、どれだけ入念に対策したかで合否が決まってしまうようなものに変わりつつあります。
それでは、今後はコンサルティングファームでは、正しく地頭を図るために別の面接形式になっていくのでしょうか。
答えとしては、一部はYesで、コンサルティングファームがフェルミ推定やケース面接に変わる新しい面接方法を採用することは十分に考えられます。
一部のファームでは、すでに一般的なフェルミ推定やケース面接というよりも、ディスカッションを通じた論理の深堀やクイズのような形式を採用している場合がありますが、今後もフェルミ推定やケース面接のような形式は残っていくと思います。
フェルミ推定やケース面接は地頭を測るための面接だというのは、一部その通りなのかもしれませんが、もはや対策し放題となっているので地頭を測るという側面は薄れています。
それよりも、このような思考方法はコンサルタントにとって、実務において日々使う必要のある必須の基本スキルなのです。
ですので、現在行われているような戦略コンサルティングが残り続ける限りは、このような面接形式も残り続けると考えられます。
外資系戦略コンサルでの面接官経験者などによる面接対策はこちら
実務におけるフェルミ推定
例えば、クライアントが新たな市場に新規参入を検討しており、市場規模を知りたいとします。
多くの場合は、リサーチ会社などが市場規模を出していますので、その数値を使えばいいのですが、ニッチな市場、あるいは市場の特定のセグメントなどは世にデータが存在しない場合が少なくありません。
そのようなときにフェルミ推定が役に立ちます。
例えば、「スマートフォンに使用される部品Aの市場規模」が知りたいとしたら、
スマートフォンの年間販売台数 × スマートフォン1台当たりの部品Aの点数 × 部品Aの単価
で求めることができます。スマートフォンの年間販売台数はさらに分解され、
スマートフォンの年間販売台数 = 人口 × スマートフォンを持っている人の割合 × スマートフォンの平均所有台数 ÷ 買い替え頻度(年数)
といった形で求めます。
現実のプロジェクトにおいては、すべてをフェルミ推定で求めるというよりも、断片的に情報が欠如していることが多いので、市場レポートのデータ、顧客へのインタビュー、アンケート、フェルミ推定といったことを組み合わせて市場規模を算出します。
このケースでは、スマートフォンの年間販売台数は3,393万台(MM総研 2021年度通期のスマートフォン出荷台数)という市場データが存在していましたのでこれを使用します。
部品Aの点数はスマートフォンあたり平均3個、単価は100円とすると、3,393万 × 3個 × 30円 = 約102億円
といった具合に算出できます。
あるいは、数値の根拠を裏付けるためにアンケートを行ったりもします。
例えば、仮に「スマートフォンの年間販売台数」というデータが存在しなかった場合、先ほどの式で、「スマートフォンを持っている人の割合」「スマートフォンの平均所有台数」「買い替え頻度(年数)」を「あなたはスマートフォンを持っていますか?」「あなたはスマートフォンを何台持っていますか?」「あなたはスマートフォンを何年で買い換えますか?」といった消費者アンケートによって数値を取得し、それらの数値を使用して市場規模を算出します。
実際、コンサルティング会社だけでなく、市場規模などを発表しているリサーチ会社においても、データがない場合はフェルミ推定を使って市場を出していることがあります。(通常は各メーカーへのヒアリング、売上高の合算といったアプローチが多い)
また、コンサルティングファームやサーチ会社にとどまらず、あらゆるビジネスを検討するときには、どの程度の売上が見込めるのか算段を立てる必要があるでしょう。
スモールビジネスのどんなに粗い計画でも、「この商品を○○円で販売すれば○○人が買ってくれそうなので○○円の売上になる」といったような算段は必ず立てるはずです。
このようにフェルミ推定は実務においても大いに役立ちます。
実務におけるケースの考え方
「A社は今後3年で売上を1.5倍にしたいと考えているが、どのような戦略をとるべきだろうか」
このようなお題がケース面接においては一般的かと思いますが、実際にコンサルティングの現場でも同じようなお題で戦略策定プロジェクトを行うケースがよくあります。
そうした際に下記のようなイシューツリーを描き(=論点を洗い出し)、イシュー(論点)に沿ってプロジェクトを進めていきます。中でも重要とみられるイシューに集中して検討することになります。
今後3年でA社の売上を1.5倍するための戦略は
既存事業の成長は可能か
3年後の市場はどのように変化するか
市場は成長するか
市場に影響を与えるトレンドは
顧客ニーズは変化するか
…
競争環境はどのように変化するか
自社の優位性を保つには
…
新規事業を立ち上げるには
自社にとって魅力的な市場は
どのような競合が存在するか
自社の強みを生かすことができるか
…
ケース面接においても同様に、ケースを考える「フレーム」を設定し、それを分解し、ボトルネックを特定し、施策を設定し、優先順位付けを行う、というような形で進めることが多いと思いますが、実際のプロジェクトにおいても同じようなステップで遂行していき、最後にはアクションにまで落とし、責任者をアサインし、プロジェクトによっては実行まで支援するような形となります。
この「フレーム」の設計がコンサルティングプロジェクトにおいて非常に重要であり、このフレームがないままに作業を進めていたのでは、重要な検討事項に漏れがあったり、不要な作業に多くの時間を費やしてしまったりしてしまいます。
ケース面接でもこのようなフレーム設計をおこなうかと思いますが、これはコンサルティングファームに入社してからも日常的に使用する非常に重要なスキルです。
ケース面接では、フレーム設計~施策出しまでを30分、あるいは1時間弱くらいの時間でおこないますが、実際のコンサルティングの現場では2,3か月かけてこれをおこなうことになります。
なぜかとうと、仮説の構築、検証、およびそれに必要なディスカッションやリサーチ・分析作業を行うのに膨大な時間がかかるためです。
また、ケース面接において、売上、あるいは利益の構造を分解していくアプローチをとることが多いかと思いますが、このような分解はあらゆるプロジェクトで多用します。
特に戦略ファームの若手はエクセルを使って財務モデルを作成したりすることが多いのですが、このモデル作成作業は若手がバリューを発揮しやすい非常に大切な作業です。
そして、この財務モデル作成の作業には、ケース面接でやるような売上や利益の分解をそっくりそのまま使用することができます。
財務モデルを作成する際には、まず下記のようなロジックツリーを作成し、それをエクセルに落として、「価格を上げたら/下げたら売上はどのように変化するか」、「○○の施策を実施したらコストにどのような影響があるのか」といったことをエクセル上でシミュレーションします。
このように、フェルミ推定やケース面接は、単純に地頭を評価するというよりも、実務で実際にやるようなことを面接を通してやっているのです。
フェルミ推定やケース面接は、対策が可能な今では、地頭力というよりも「スキル」に近いので鍛えれば鍛えるほど上達します。
なので、コンサルティングファームで働きたい人は、入社面接をパスし、入社後もすぐに活躍できるようにフェルミ推定やケース面接の対策を十分にしておきましょう。
外資系戦略コンサルでの面接官経験者などによる面接対策はこちら
Comments