トップ戦略コンサルタントが教える仮説思考の問題解決
マッキンゼーアンドカンパニー、ボストンコンサルティンググループ(BCG)、ベインアンドカンパニーなど、トップ戦略コンサルティングファームのコンサルタントが日々行う問題解決はどのようなプロセスで行われているのでしょうか。
ここでは、戦略コンサルタントが行う仮説ベースの問題解決のアプローチについて、トップ戦略ファームのコンサルタントが紹介します。
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2種類ある問題解決
問題解決というと何を思い浮かべますでしょうか?
あなたが日常生活において何か問題を抱えているとします。
例えば、水道が故障したり、クーラーが故障したりしたら、簡単な問題であればインターネットで検索したりして自分で直したりすることができるかもしれませんが、難しい場合は業者を呼んで直してもらうでしょう。
つまり、あなたは日常生活において様々な「プロフェッショナル」に問題解決の依頼しています。
プロフェッショナルが行う問題解決には主に2種類あります。
1. ソリューションベースの問題解決
一つは、問題解決の方法がわかっている「ソリューションベース」の問題解決です。
例えば、クーラーのフィルターが汚れていたらフィルターの掃除をする。蛇口から水漏れしていたら、止水栓を閉める。虫歯になったら詰め物する…といったように、問題と解決策が明確な場合、このようなソリューションベースの問題解決が用いられます。
このような問題解決を行うプロフェッショナルは、自身が持ってる知識やスキルで問題解決をします。特に、「こういう問題が起きたらこういう解決策をとる」というように「解決策を選ぶ能力」が重要です。
クーラーの修理業者なら、おそらく修理マニュアルがあるでしょう。なので修理業者としては、問題の症状を見て、マニュアルから素早く的確に解決策を選ぶ、ということが求められます。熟練した人であればマニュアルが自身の頭の中に入っており、マニュアルを参照せずとも、頭の中で問題と解決策を瞬時に結び付けることができます。
症例があってそれに適した対処法を選ぶ歯医者などもこの部類でしょう。
このような問題解決は、問題の種類が決まっていて、ルーティーンのような形で問題解決するのに適しています。
2. 仮説ベースの問題解決
それでは、「○○業界で1位の会社になるにはどうしたらいいか?」、「M&Aを成功させるにはどうしたらいいか?」といった質問に対して決まった答え、解決策は存在するでしょうか?
このような問いには決まった一つの答え、解決策は存在しないので、このような問いに対しては、ソリューションベースの問題解決が使えません。
M&Aのスキームによってもまったく違うし、そもそもM&Aするのがよいのかも考える必要があります。例えば、業績不振の事業を売却して会社の利益率を上げたいのであれば、M&Aをせずとも事業を立て直してターンアラウンドできるかもしれません。
この問題解決のアプローチは、問題に対する解決策を実施するソリューションベースの問題解決と違い、必ずしも特定分野の知識やスキルを必要とせず、様々な分析や検証により、潜在的な解決策の提案をするアプローチになります。
明確な解決策がない複雑な問題の場合に役に立つ問題解決のアプローチであり、戦略コンサルタントは主にこのアプローチで問題解決を行います。
仮説ベースの問題解決(Hypothesis based problem solving)
When(仮説ベースの問題解決をいつおこなうのか)
仮説ベースの問題解決は、問題が明確に定義されていない、同じ問題が繰り返し何度も起こるわけではない、解決策が決まっていない、環境や状況によってかわる、といったときに役立ちます。
Why(仮説ベースの問題解決をなぜおこなうのか)
仮説ベースの問題解決は、まずデータをたくさん集めて分析をして結論を出す、というアプローチよりも早く、少ない労力で解決策にたどり着くことができます。
仮説ベースの問題解決は、単なる当て勘、予想などではなく、科学的、帰納的な思考法です。例えば、コペルニクスは、地球が太陽の周りをまわっていると勘で言ったわけではなく、観察に基づく仮説を提唱したのです。
仮説ベースの問題解決のプロセス
仮説ベースの問題解決のプロセスには、①フォーミュレート(定義)、②ストラクチャー(構造化)、③デザイン(設計)、④コミュニケーション(伝達)の4つの段階が存在します。
順に解説していきたいと思います。
1. フォーミュレート(定義)
まずは、問題解決のゴールを定義、設定する必要があります。良いゴール設定は、SMART(Specific, Measurable, Action-oriented, Relevant, Time-bound)のフレームワークで定義します。具体的か(Specific)、測定可能か(Measurable)、実行可能か(Action-oriented)、関連性があるか(Relevant)、期限はあるか(Time-bound)の頭文字をとってSMARTと呼ばれます。
例えば、クライアント企業の社長から「利益が下がっているのでどうにかしたい」と言われたとします。これでは明確ではないのでSMARTな目標を定義にする必要があります。
具体的か(Specific)
経営層とのディスカッションによって問題を具体的にします。(B2Cのビジネス / ○○事業 / ○○地域で利益が下がっている等)
測定可能か(Measurable)
5年で5%利益改善する、というように定量的に数値で目標を表すようにします。
実行可能か(Action-oriented)
目標が実現可能なものでなければ絵に描いた餅のようになってしまいますので、実際に実行に移し、達成できるようなものにします。
関連性があるか(Relevant)
実現するためのマイルストーンは、設定した最終的な目標に関係していなければいけません。また、関係のないアクションなどはそぎ落とす必要があります。
期限はあるか(Time-bound)
何事にも期限が必要です。ビジネスにおける重要なアクションであればなおさらですので、現実的な期限を設定する必要があります。
SMARTなゴール設定ができたら、次は5つのステップで問題をフォーミュレート(定義)していきます。
1. ビジネス環境の調査
会社、あるいは事業がおかれているビジネス環境を理解する必要があります。
社内:組織がどのようなパフォーマンス(財務・非財務)か、経営層がなにを考えていて、どのようにして実行しようとしているのか
社外:マーケットポジショニング、マクロ環境、グローバルトレンド
2. 成功の基準の定義
何がどの程度どうなれば成功なのかを定義するひつようがあります。(例: ○○%のマーケットシェアを獲得、○○%のリターンを獲得)
3. ステークホルダーの特定
ステークホルダーがだれか(意思決定者はだれか、プロジェクトに誰が関与するのか等)を定義する必要があります。
4. 解決策の定義
何を解決策としてとらえるのか、どの程度のレベル感の解決策を策定するのかをあらかじめ決めておく必要があります。