アウトプットを出すためにアウトプットを出すための練習をする人がいますが、それは本質的ではありません。
もちろんアウトプットの練習、つまり表現力を磨いたり、相手にわかりやすく伝える能力を向上させるのは無駄なことではありません。
しかし、アウトプットを出すには、 「インプット」→「頭の中で情報を加工」→「アウトプット」
というプロセスをたどりますので、アウトプットのみの練習をするというよりも、アウトプットの素になる「インプット」と「頭の中で情報を加工」という部分を練習する必要があるのです。
つまり、アウトプットは情報の組み合わせ・加工によってできていますので、良いアウトプットを出すには、良いインプットを得ることとそれらの情報を頭の中で加工する思考力が必要なのです。
さらに、インプットに関しては、人より多くの情報をインプットすることと、人と違う情報をインプットすることが必要です。
思考力に関しては、人より多く考えることと、人と違う思考をすることが必要です。
良いアウトプットを得るには「人と違った着眼点を持つ」
人よりも多くのインプットをする、人よりも多く考えるというのは文字通り「量」を増やすということですので、ここでは「質」を向上させるということに特化してお話したいと思います。
情報の種類は一次情報、つまり自ら取得した情報と、二次情報、つまり他の人が収集した情報に分けられます。
一次情報は自分しか知らない情報、二次情報は誰でもアクセス可能なメディア等の情報です。
一次情報は自身の経験がものを言います。つまり、人と違う情報を持っているかどうかは「人と違う経験をしているかどうか」が非常に重要です。
仕事における経験というのは、主にロケーション、インダストリー、ファンクションで異なってくるのではないかと思います。
ロケーションは働く地域、インダストリーは業界、ファンクションは職種となります。
例えば、日本のメディアで広告営業をしている人はたくさんいるので、自身だけが知っている一次情報を取得する機会にはあまり恵まれないのではないでしょうか。
ロケーション: 日本 インダストリー: メディア ファンクション: 営業
逆にこのような場合だとどうでしょうか。
ロケーション: アフリカ インダストリー: 金融 ファンクション: 新規事業
日本人でアフリカで金融の新規事業をやっている人はあまりいないのではないでしょうか。後進国におけるテックを活用したマイクロファイナンスなど先端的な一次情報を持っていそうです。
ロケーション、インダストリー、ファンクションといったように特定の環境に自信の身を置くことに加えて、希少な一次情報を取得するには自身の知識、経験も重要です。
例えば、日本国内で技術者をずっとやっていてドイツの顧客のために現地に出張して、現地の技術者と協力して開発をしなければならない機会があったとします。その際に、ドイツの技術者の「技術力」、「働き方」みたいなことは自身が技術者なのでわかるかもしれませんが、ドイツ企業の「イノベーション組織」、「全社戦略とイノベーションのつながり」のようなことはそういった知識、経験を持っていなければそこに着目することはないのではないでしょうか。
情報取得に関しても、自身の経験、知識によって「着眼点」が変わってくるので幅広く、貴重な経験を積むのが重要です。
着眼点は、戦略に着眼するのか、開発に着眼するのか、といったように
「どこに目をつけるか」ということです。
経験によって人と違った着眼点を身に着けることが重要です。
人と違う思考をするには「人と違う視点を持つ」
次に、人と違う思考をするということですが、思考の種類は、比較、具体化、抽象化、応用、整理(構造化、並び替え、分類、関連付け…)などがあります。
こういった思考を人と違うようにするというのが、人と違った価値ある「視点」を提供するポイントですが、この中でも特に、自身の中で「比較できるものをもつ」ことが別の視点を提供する価値につながります。
自身の中で「比較できるものをもつ」ということの例を挙げると、例えば、日本のイノベーションエコシステムの現状について調査しているとします。
日本のイノベーションエコシステムが良いか悪いかを判断するには、日本国外のエコシステムと比較する必要があるかと思います。
例えば、イギリスと比較した際には、日本は、人材のダイバーシティが少ない、VC投資がイギリスと比べて一般的でない、政府の支援が遅れている、研究機関の技術活用がうまくいっていない…といったことが言えるわけです。
これも、アメリカと比較するのか、中国と比較するのか、イギリスと比較するのか、イスラエルと比較するのかによって違ってきます。
つまり、「どこに目をつけるのか」というのが「着眼点」だとしたら、アメリカから見た日本なのか、イギリスから見た日本なのか、といった
「どこから見るか」というのが「視点」なわけです。
視点も着眼点と同じように、人と違う経験をする、人と違う知識を得ることによって、人と異なる貴重な視点を持つことができるようになります。
日本の政府関係者、シリコンバレーの起業家、ロンドンのベンチャーキャピタリスト、どれも異なった視点で日本のエコシステムを見ているはずです。
上記の例でいうと、日本の政府の視点で日本のエコシステムを語れる人は日本に多くいるはずなので、人と違う価値のある視点を提供するには、シリコンバレーの起業家やロンドンのベンチャーキャピタリストの視点で語るほうが貴重な視点となるわけです。 つまりは、人と違う視点を持つには人と違う経験をしたほうがいいということです。
まとめ
良いアウトプットを出すためには、アウトプットそのものの技術を磨くというよりも、インプットと思考力を磨くということが必要です。
言い換えれば、良いアウトプットを出すには、「人と違った着眼点を持つ」ことと「人と違った視点を持つ」ことが必要です。
人と違う「着眼点」と「視点」は人と違う経験・知識によって得られますので、いかに人と違う経験をして、知識を得られるかが重要になってきます。
私は、常にこのことを心掛けているため、周りから非常にはたくさんの経験をしていると驚かれることが多いです。
中卒で色々な仕事を転々とし、その後、アメリカの大学とイギリスの大学院を卒業し、コンサルティングファームにいた頃はいろんな国で幅広いテーマのプロジェクトを経験し、イギリスのイノベーション支援企業でヨーロッパ最大のアクセラレーションプログラムの運営をしたり、ロンドンのフィンテック企業で戦略責任者をしながらアメリカの大学院でコンピュータサイエンスの勉強・研究をしたり、また、企業のアドバイザーをやったり、人材会社を立ち上げたり、友人と一緒にキャリア系事業をしたり… プライベートでは音楽活動をやって海外のレーベルと契約したり、海外のフェスに出演したりもしています。
様々な人と違う経験を積み、複数の興味分野を持つことでいろいろなところに着眼できるのです。
筆者
西垣和紀
高校中退後、数年間仕事を転々とした後、渡米。アメリカの大学を卒業後、外資系コンサルティングファームに入社し、大企業の戦略策定、M&A、業務改善、新規事業創出などに従事
その後、オックスフォード大学MBAを経て、ロンドンのスタートアップで事業責任者、外資系企業のCOO(最高執行責任者)などを歴任し、現在はヨーロッパと日本を行き来しながら様々なビジネスの立ち上げや企業のアドバイザーとして活躍
また、音楽活動をしており、アメリカ西海岸のレーベルと契約、海外フェスへの出演やイギリスのトップアーティスト「ピクシー・ロット」などと共演
著書「オックスフォード大学MBAが教える人生を変える勉強法」(大前研一氏推奨)など
カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)マネジメントサイエンス専攻 オックスフォード大学サイードビジネススクールMBA(経営管理学修士) ペンシルバニア大学大学院コンピューターサイエンス専攻
Twitter: @kazukinishigaki
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