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執筆者の写真Joe

アメリカの大学に留学するデメリット ~ 国内での就職には不利になる

更新日:2020年8月11日

“就職に不利”とは具体的にはどういったことなのか。  ここでいう”就職”とは日本国内での就職の事であるが、大きくは、”4月に一括採用の会社が多い中、卒業時期が3月以外である場合、4月に入社するまでブランクが生じる”という事と”海外留学生は物理的に日本での就職活動(説明会、面接等)ができない”という事の2つではないかと思う。  

卒業時期が3月以外の場合、入社までブランクが生じる

ブランク、すなわち卒業から入社まで時間が空いてしまうという事であるが、大学在学中に内定がある場合はその期間はいわゆる”自由時間”となり、在学中に内定が無い場合は卒業後の期間は就活期間となる。 

前者の場合、旅行やアルバイト等好きな事ができるので良い側面もあるが、1年遅れての入社となるので同期より年を取ってしまうといった事もある。 

後者は、留学生であれば新卒扱いとする会社もあるが、既卒扱いにする会社もあり、いずれにせよ入社が遅れてしまうので大学在学中に就職先が決まっている状態が理想的だろう。 

ここでは卒業から入社までのブランクが無い/短い方が良いという前提に基づいて述べる事にする。 

アメリカの学生は5-6月あるいは12月卒業となる場合が多く(クオーター制では3月、8月卒業の人も一定数いる)、企業は通年採用を行っている。 

一方でご存知の通り、日本の大学は3月卒業なので、新卒採用においては大半が4月入社のみの採用としている企業が大半である。 なので、3月以外に卒業するアメリカの学生にとっては就職までの間ブランクが生じる。 

次のグラフは通年採用を導入している企業の割合である。



“年間を通じ、随時採用している”が6.2%、”春季一括採用に加え、夏季採用や秋季採用を実施している”が31.7%と通年採用(あるいは春季以外の採用)を導入している企業の割合は36.9%となる。 一方で、”今後も実施する予定はない”と応えた企業の割合は52.7%と半数以上を占める。 

また、海外留学生、留学経験者、バイリンガルのための就職情報サイト「マイナビ国際派就職」で”秋季・通年採用している企業”でフィルターをかけてみると(2015年1月8日時点)、ヒットしたのは全体の17%程度である。 つまり、海外留学生を積極的に採用したいと考えている会社ですら通年採用を行っている割合は少ないという事である。 

 このように通年採用を行っている企業は増えてきているものの、依然として少ないと言える(通年採用導入済み<通年採用導入予定無し)。 

 次のグラフは企業の海外留学経験者への対応状況を表したグラフであるが、”春季採用で他の学生と同様に対応”と応えた企業は実に全体の68.8%に上る一方、”特別な採用機会を設け、他の学生とは別に対応”と応えた企業はわずか5.6%でる。


以上のデータから、国内企業の採用時期は4月採用(通年採用をしていない企業)が最も多く、留学経験者を特別扱いする企業は少ないという事が分かった。 

企業が採用時期を留学生に合わせてくれないとしたら、以下のいずれかの選択になるだろう。 

①企業の採用時期(主に4月)まで入社を待つ(卒業時期が合わない場合) ②通年採用の企業(自身の卒業時期に合った採用時期の企業)に絞って就活する ③企業の採用時期(主に4月)に卒業時期を合わせる

これらの選択肢を以下に”企業の選択肢”と”卒業から就職までのブランク”という2つの観点で整理した。


①企業の採用時期(主に4月)まで入社を待つ(卒業時期が合わない場合) 企業の採用時期に合わせるので、就活対象の企業は全企業という事になり、企業の選択肢が限られる事はない 一方で、卒業時期と採用時期が合わない場合、その分の期間はブランクとなる

②通年採用の企業(自身の卒業時期に合った採用時期の企業)に絞って就活する 全頁のデータによると、通年採用(あるいは春季以外の採用)を導入している企業の割合は36.9%であったので、就活対象の企業は限られてしまう 一方で自身に合った自身の卒業時期に合った採用時期の企業であればブランクが発生しない

③企業の採用時期(主に4月)に卒業時期を合わせる 企業の選択肢が限られない、克つ卒業から就職までのブランクが生じない

2つの基準を加味すると、”③企業の採用時期に卒業時期を合わせる”が最も良い施策となるが、実際にこれが実行可能かどうかを見て行きたい。 

アメリカの大学の1年間のスケジュール(セメスター制、およびクォーター制)は以下である。

大学の卒業時期から入社時期(4月と仮定)までのブランクを無くす、或いは最小化するには、セメスター制であれば秋学期で修了(1月)、クォーター制であれば冬学期で修了(3月)すれば良い。 

 卒業に必要な単位は セメスター制では120セメスター単位、クォーター制では180クォーター単位であり、留学生が1学期辺りに取得しなければいけない最低単位数はそれぞれ12単位となる。 

 次の表は単位取得のシミュレーションである。 それぞれ、4年生大学に1年次から入学した場合、Community Collegeから4年生大学に3年次で編入した場合である。 


左の2つのグラフは最低単位数を取得した場合の例で、セメスター制の場合、最低取得単位数の12単位と夏学期に6単位(1クラス=3単位として2クラス分)を取得した場合、4年間での卒業となる。 

一方、クォーター制の場合は最低取得単位数の12単位と夏学期に8単位(1クラス=4単位として2クラス分)取得した場合であるが、クォーター制の場合最低取得単位数と夏に2クラスづつでは4年で卒業出来ないため、1部16単位となっている。 

右の2つの表は最低取得単位数より1クラス多く受講するとどうなるかという例である。 セメスターの場合、それに加えて夏に2クラスとれば秋学期の卒業が可能であり、クォーターの場合、夏学期に取得するのは1クラスで冬学期に卒業となる。 

4年生大学に1年次から入学した場合、最低取得単位数より1クラス多く取れば日本企業の入社時期より早く卒業できるのである。 

一方、Community Collegeでセメスター制の場合60単位、クォーター制の場合90単位取得した後に4年制大学に編入した場合はどうか。 

 次の表を見ると、セメスター制の場合は2クラス余分に取得すれば(1学期あたり18単位)秋学期で卒業でき、クォーター制の場合は、1クラス余分に取得すれば(一部2クラス余分(4単位と2単位)で18単位)冬学期に卒業できる事となり、企業の採用時期に遅れる事はない。   セメスターの場合は2クラス余分に取得しなければならないのでタイトなスケジュールになるが、セメスターとクォーターいずれの場合でも早期に卒業し、企業の採用時期に間に合わせる事ができる。 


このように、企業の採用時期に卒業時期を合わせるというのは十分可能である。  Community Collegeからの編入の場合は、特にセメスターの場合スケジュールがタイトになっているが、これはCommunity Collegeで60単位(セメスター)/90単位(クォーター)しか取得しなかった事を想定した例であるため、Community Collegeでこれ以上の単位を取得し、4年生大学に移行すれば4年生大学でのスケジュールは比較的楽になる(編入先の大学で最低限取得しなければいけない単位数は大学による)。



海外留学生は物理的に日本での就職活動ができない

留学生の日本国内での就職が不利であると言われている他の理由はやはり、海外にいるので物理的に就職活動が出来ない事である。 

アメリカでは大学卒業後に就職活動をするのが一般的である。  これに対して、2016年度の就活時期は企業の採用広報活動のスタートが大学3年生の3月1日、選考活動スタートが大学4年生の8月1日となっており(経団連発表 「採用選考に関する指針」 )、就学中に就職活動を開始する。 留学生の場合は基本的に国外にいるので企業説明会に出席できなかったり、選考が受けられなかったりと物理的に日本での就活ができないと言われている。 

国内大学生と同様に就職活動をするのはやはり難しそうであるが、ではどのように就活を進めればいいのだろうか。 以下の4つの方法があるとして、卒業から就職までのブランクが生じないものについては上の2つである。

・大学に通いながら日本で就活 (講義を一定期間休んでセミナー、面接等を受ける、夏休み・冬休み等講義が無い時期を利用して就活する、休学して就活する) ・大学に通いながらアメリカで就活 (夏休み・冬休み等講義が無い時期を利用して就活する) ・卒業してから日本で就活 (卒業してから日本に帰国して就活) ・卒業してからアメリカで就活 (卒業してからもアメリカに住み続けながら就活)

偏に就活といっても具体的に日本国内にいるのといないのでは何ができて何ができないのだろうか。 以下に4つの就活方法で出来る・出来ないを整理した。 


ブランクが生じない上の2つを見ると、自己分析や業界・企業分析、筆記・試験対策、エントリーは場所を選ばず可能である。 それ以外でも、基本的には時期・手段は限られるが可能ということになる。 

しかしながら、前段で説明した通り、卒業から就職までのブランクを最小化しようとすれば、セメスター制は4年目の秋学期、クォーター制は4年目の冬学期で卒業しなければいけない。 

休学をして、克つ卒業時期をキープするならこれを更に短縮しなければいけない事になるので、1学期のスケジュールが更にタイトになり、卒業期間短縮は難しくなる。 

なので、1番上の方法、大学に通いながら長期休暇、講義を休む、休学等を利用して日本で就活する事は、卒業時期を遅らせる可能性が高まってしまうので得策とは言えない。 

結果的に2番目の”大学に通いながらアメリカで就活”という方法が唯一、卒業時期を遅らせることなく就活できる方法となる。  この方法で就活をする場合、先ず、自己分析や業界・企業分析によって自身が行きたい業・企業を特定し、1~3のナンバリングの順に企業を探していくのが良いだろう。 


1. 留学生のスケジュールに柔軟に対応してくれる企業 自身が通う大学、あるいは別の大学にキャンパスビジットで来ている企業を狙う ・日本人留学生の採用に積極的な企業は優秀な学生の青田刈りをするため、キャンパスビジットを積極的に行い、採用活動を行っているので自身の大学、あるいは近くの大学に来ている企業の選考に参加する ・留学生の採用に積極的なので選考も柔軟である可能性が高い ・規模が小さい大学にはそもそもキャンパスビジットに来ないし、規模の大きな大学でも年間数社~十数社となり数が限られる ・自身で企業を誘致するように働きかけるという手段もある

就活イベントに出展している企業 ・留学生の採用に積極的なので選考も柔軟である可能性が高い ・例えば、2014年のBoston Career Forumの参加企業数は190社で様々な業界の一流企業が参加している

2. WEBテスト、電話面接等遠隔でも選考が行える企業 1で自身の興味のある企業が無い場合は、興味のある企業のホームページ等を見る、あるいは問い合わせをして遠隔で選考が行える企業を見つける

3. 長期休暇のタイミングで筆記試験・面接を行っている企業 1,2で自身の興味のある企業が無い場合は、興味のある企業のホームページ等を見る、あるいは問い合わせをして自身の長期休暇期間に選考を行っている企業を見つける



サマリー

卒業から入社までのブランクをデメリットととらえるならば、デメリットを克服するためには企業の入社時期に合わせる前提でそれよりも前に卒業するためのクラス設計をする必要がある(通年採用を行う会社が少ないというデータがあるので)。

9月に大学、あるいはCommunity Collegeの1年次に入学して、4年以内に卒業する事は十分に可能であるので卒業・入社時期の問題に関しては解決できる。

もう1つのデメリットは国内大学生と同様の就職活動ができないという事であったが、これも企業は限られるが、アメリカに滞在しながら日本企業の選考を受ける事は可能である。

 どうしても選考を受けたい企業が上記に挙げた1,2,3に無い場合は講義を休んだり、休学して日本に帰国し、選考を受ける事も可能であるし、休学した場合でも4年以内に卒業する事ができる。  ただし、スケジュールがかなりタイトになるので入学当初からの計画が重要になる。 

 “国内での就活”というと物理的に日本にいて国内学生と同じように就活をすると捉えられるかもしれないが、”国内企業を対象にした就活”と捉えれば、留学経験者を対象としたジョブフェアやアメリカの大学へのキャンパスビジットを行う国内企業もあり、国内学生に比べてアドバンテージとなる点はかなりある。 

従って、留学生の就活は一概に不利とは言えないだろう。 

さて、次回はアメリカに留学する際のデメリットのひとつである国内のネットワークについて触れたい



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